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2025/05/23

親名義の不動産、売れると思っていたのに──認知症で契約できなかった話

こんにちは。
千織不動産の加納千織です。

今日は、
「高齢の親の施設入所費用を捻出しようと、親名義の所有不動産を売却しようとしたら、
認知症が進んでいたために売却できなかった。」
というケースについてお話しします。
 

これは実は、私の祖母の話で、実際にあったことです。
「宮城にある土地を売りたいと言っていたのに、いざ売却しようとしたら認知症が進行していて、
司法書士の意思確認が通らず、売却できなくなったんです…。」
 

これは決して珍しいケースではありません。

小学校の教員だった祖母は、ずっと宮城県に住んでいました。
退職後も昔から住んでいた家で暮らしていたのですが、
祖父が亡くなってから徐々に一人暮らしが心もとなくなり、
三姉妹の母と叔母2人が関東から宮城まで通ってサポートしていたのですが、
それも長期になると大変になり、東日本大震災の前に引っ越して、
埼玉の高齢者施設に入所していました。
 

祖母の家は震災で津波の被害にあい、建物は床から100cmくらいまで浸水しましたので、
誰も住んでいない建物は、行政により取り壊していました。
 


ずっとそのままになっていたのですが、宮城の家の管理や祖母の施設とのやりとりなど
一切合切を切り盛りしていた母がついに、
「固定資産税や草刈りの費用もかさんで来ているし、施設の費用も段々増えてきている、
来年は固定資産税減免の特例も終わる。もうこのタイミングで売却しよう。」
と決意しました。
 

それを、祖母に話すと
「そうね、、もう誰も住んでないし、あなたたちはこちらにお家があるし。
そもそももう建物はないのよね。世話をかけましたね、それではもう手放しましょう。」
とあっさり売却の意向を固めたのでした。
 

そういう訳で、母は祖母の代からお世話になっていた工務店の社長さんから紹介していただいた
不動産会社へ連絡し、土地売却の仲介をお願いすることとなったのです。
 

そこからは、確定測量、造成、接道している隣家との持分についての覚書の取り交わし等、
様々なことを不動産会社の担当者の方が動いてくださったと聞いています。
そして、工務店の社長さんがその土地を買いたいと言ってくださり、
売買契約を締結することとなりました。
 

不動産会社の担当者の方から、
「売却にあたっては、司法書士による本人確認、意思確認が必要ですので、
こちらから司法書士を手配しますね。」
と連絡がありました。

司法書士の先生が、わざわざ仙台から埼玉の祖母が入所している施設まで
来てくださることになりました。
 

その時母は、
この確認が終われば土地が売れる。
もう草刈りの心配や税金の心配をしなくて済む。
何より、年々増えてきた施設利用料金が、祖母の年金で賄えなくなってきた時のための
蓄えとしてあれば安心だから、、
と今までの苦労や心配が解消される時がきたのだと、ほっとしていたと話していました。
 

ところが!
司法書士の先生は、スーツを着た男性の方。
祖母は少し緊張したのかもしれません。


 
先生が「あなたが所有されているこの宮城の土地を、売却されるのですね?」と問われると祖母は、
 
「いえ、売らないわ。あなたには売らない。」
 
その土地は、昔なじみのお世話になった工務店の社長さんに買ってもらうから、
と聞いていた祖母は、何か勘違いしたのでしょう、そう回答したといいます。
 

そこから、母と司法書士の先生が、
買主はこの先生ではない、
以前からとてもお世話になっている工務店の社長さんなのだ、
と何度も説明するも、

「この土地はあなたには売れない。せっかく遠くからきてくださったけど、
もうお帰りになって下さい。」

と何ともちぐはぐな押し問答が続いてしまい、
司法書士の先生から
「残念ながら、この状態で売買契約をすることはできません。
お役に立てず申し訳ないが、不動産会社の担当者にそのように報告させていただきます。」
と言って宮城にお帰りになりました。
 

母は愕然としたそうです。
ほっとしたのも束の間、こんなことになって、、
認知症が進行する前に、もっと早くすれば良かった。
そんな風に思ったそうです。
 


結果、祖母が存命中にはその土地の売却をすることはできず、祖母亡き後、
相続が発生してから母と叔母の共有名義になった土地を売却しました。
 
95歳で亡くなった祖母の土地を相続した母は、その時75歳。

件の時は、育児で忙しかった私を頼らずに自分1人で動いていたのですが、
その時はもう疲れてしまった、といって私に助けを求めてきました。
 

そう言った経緯で、母と叔母に全てを任された私は、
当時不動産の仕事をしていた訳ではなかったのですが、
母と祖母の「代理」として再度、土地の売却に動くことになりました。
 

認知症が進行すると、不動産売却ができない?

不動産を売却する際、売主本人が売却の意思を持っていることを確認するために、
司法書士が意思確認を行います。
ところが、認知症が進行していると「売却の意思が明確でない」と判断され、
売買契約を結ぶことができなくなるのです。
 

実際、祖母のケースでも、勘違いしているとはいえ、
「この土地は売りたくない」と話し、「売却したい」ということを言えなかったために
司法書士が売買契約を認めませんでした。

祖母の場合は、すでにホームに入所しており、
その後の費用も預貯金で何とか賄うことはできたのですが、
施設入所の費用を確保するために売却を考えていたご家族様で、
計画が大きく狂ってしまったというケースも少なくありません。

 

このようなトラブルを防ぐためには、以下のポイントを押さえておくことが大切です。


1.早めに売却を検討する


不動産の売却には、ケースによっては数ヶ月〜年単位の年月がかかる場合があります。売りたいと思った時に、すぐに売れないこともある、ということは認識しておいてください。
また、「そのうち売ろう」と思っていると、売主の判断能力が低下し、売却ができなくなる可能性があります。高齢になった親が施設へ入るタイミングなど、元気なうちに手続きを進めるのが理想です。

 

2.家族で話し合う


親が「自分の財産だから、好きなタイミングで売る」と考えている場合でも、子ども世代が「売るなら早めに」と意識しておくことが重要です。親が元気なうちに、売却のタイミングや資産の管理方法について話し合っておきましょう。

 

3.家族信託制度を検討する


親が所有する不動産に対して、「もしも」の時には家族が判断できるようにする法的な手続きもあります。
詳しくは司法書士などの法律の専門家に相談してみてください。

 

4.成年後見制度を活用する


すでに認知症が進んでしまい、意思確認が難しい場合は、成年後見制度を利用する方法もあります。ただし、成年後見制度を利用すると、家庭裁判所の許可が必要になり、売却までに時間がかかることがあります。

以上のことから、早めの対応がカギです。
 

「親の不動産、どうすればいい?」と悩んだら、まずはご相談を!

 
 
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大切な家族の資産を、スムーズに引き継ぐために、一緒に考えていきましょう。


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